麻酔アレルギー

【概要】

手術や検査の際に使われる麻酔は、動物にとって痛みだけでなく恐怖を取り除くために必要不可欠です。しかし、まれに麻酔に対してアレルギー反応・有害反応を起こすことがあります。これらの反応は、麻酔薬の投与直後に現れることが多く、軽い皮膚症状から、命に関わる重篤なショック状態まで幅広く見られます。多くの場合は迅速な対応により回復しますが、重症の場合には命に関わったり、入院治療が必要になることもあります。

 

【症状】

麻酔アレルギーの症状は以下のように分類されます。

・軽度の症状

 麻酔後の元気消失や嘔吐、皮膚の赤みやかゆみ

・中等度の症状

 血圧の低下による元気消失、軽度の臓器障害(腎障害など)

・重度の症状(アナフィラキシーショック)

 意識の消失、麻酔から覚醒しない、心肺停止、死亡 

 重度の反応は非常に危険な状態であり、迅速な救命処置が必要です。

 

【診断】

麻酔アレルギーの診断は、麻酔薬の投与後に起きた症状やタイミングをもとに判断します。

・術中のモニター記録の確認:呼吸や心拍の変化、血圧の急激な低下などをチェックします。

・術後の診察:手術後に現れた異常症状の有無や経過を観察します。

・血液検査:炎症や急性ショック状態を反映する数値を確認します。

 

【治療】

アレルギー反応の重症度によって、治療内容が異なります。

・軽度

 点滴や酸素吸入でサポートを行いながら経過を見ます。多くは1日以内に改善します。

・中等度

 血圧を安定させる点滴治療、必要に応じて薬剤の追加投与を行います。多くは治癒するまで数日から1週間程度かかります。

・重症

 緊急的な手術麻酔の中止および、強心薬・昇圧剤の投与などの緊急処置を行います。重症の場合には治癒するまでの期間は様々で最悪のケースでは急死します。またその後も治療まで1週間以上長期間かかったり、完全に治癒しない場合もあります。

 

【当院の取り組み】

当院では簡易的な避妊去勢などの手術であっても必ず麻酔前の検査を行います。手術前には問診と身体検査、必要に応じて血液検査やレントゲンやエコーなどの画像検査を行い、麻酔に耐えられる体かどうかを慎重に確認します。

・麻酔中のモニタリング強化

麻酔中は心拍数・呼吸・血圧・酸素飽和度などをリアルタイムで監視し、異常があればすぐに対応します。麻酔前の検査にて心臓病などの持病がある場合には持病の状態に合わせて麻酔薬の種類や強心剤などによる治療を行いつつ麻酔を行います。

 

【入院・通院の予測】

軽度であれば1日程度で治癒するため入院は必要ありませんが、中等度以上の反応が出た場合には1日以上の入院管理が必要になることがあります。

 

【費用の目安】

麻酔アレルギーに対する処置には、以下のような費用がかかる場合があります。

・軽度:5,000〜10,000円程度

・中程度:10,000〜15,000円程度

・重度:30,000〜50,000円程度(重度な場合には症状により治療費の幅が大幅に異なります)