犬のリンパ腫

【概要】

犬のリンパ腫は、体中のリンパ組織ががんになる病気です。

顎の脇や膝の裏など代表的なリンパ組織がありますが、

リンパ組織は体内に広く分布しているため症状は場所によって異なります。

犬の場合、多中心型と呼ばれる全身のリンパ節が腫れるタイプと、

消化器型と呼ばれる胃腸が腫れるタイプがあります。

症状としては、元気や食欲の低下がよく見られ、

体のリンパ節が腫れている箇所(例えば、首の下など)が確認されます。

早期発見と治療が重要ですので、異常な症状が見られた場合は早めに動物病院を受診してください。

 

【診断】

身体検査により、体のリンパ節の腫れを触診します。

同時に、血液検査、レントゲン、エコー検査によって、

触診では分からない部分のリンパ節の腫れを確認します。

最終的には細胞診という検査を行います。

細胞診は腫れているリンパの細胞を針で取り、

顕微鏡でその細胞を観察することで確定診断が行われます。

この方法により正確な診断を得ることが可能となります。

 

【治療】

リンパ腫の治療には主に多剤併用療法という複数の抗がん剤を組み合わせた治療が適応されます。

ただし、腫瘍の位置によっては手術が必要であり、

手術後に抗がん剤治療が追加されることもあります。

どの抗がん剤を選択するかまたは手術が必要かどうかなどの決定は、

動物たちの具体的な状態やリンパ腫の種類によって異なります。

そのため個々の症例に合わせて最適な治療プランを獣医師だけでなく飼い主様も併せて相談する必要があります。

 

【当院における取り組み】

先述の通りリンパ腫の治療には抗がん剤のみを使用するか、手術も検討するかなど、

使用する抗がん剤の種類も多岐にわたり一律に適用できる方法が存在しません。

このため、治療方針については飼い主様と何度か面談を行い、最適な治療を共に見つけていきます。

面談では、各抗がん剤の効果や副作用、通院の頻度、費用、

そして犬の性格などを考慮し、最も適した治療方法を選択していきます。

 

【通院・入院の予測】

通常、週に一度程度の通院で抗がん剤治療が行えます。

ただし、副作用が強く現れる場合にはその都度通院が必要になります。

抗がん剤の副作用が強く出ることで入院が必要になることもまれにありますが、

その発生頻度は約1%程度と非常に低いです。

 

【費用の予測】

診断までの費用は約3万円から5万円程度です。

治療費は治療プランにより異なりますが、

最も一般的な選択である抗がん剤治療の場合を詳しく記載します。

抗がん剤治療では、副作用と効果により、必要最小限の抗がん剤を使用する方法と、

副作用は強いが効果も最も高い最大限の抗がん剤を使用する方法があります。

最小限の抗がん剤を使用する場合、月に約2~3万円程度となります。

最大限の抗がん剤を使用する場合は、初めの1~2か月目は月に約10~15万円程度かかり、

3か月目以降は使用頻度が減るため約半分程度の費用がかかります。

この治療を約半年間継続します。最終的には、約半年で40万円から50万円程度となります。

治療費は一度にかかるのではなく、複数回の抗がん剤使用と副作用の治療を合算したものです。

抗がん剤1回あたりの費用は約2万円から3万円であり、15~20回に分けて抗がん剤投与を行います。

なお、この費用は小型犬の場合の予測であり、動物の状態、体重により異なる可能性があります。

費用に関しては、診療された獣医師と詳しくご相談ください。