犬の乳腺腫瘍

【概要】 

犬の乳腺腫瘍は、メスの乳腺部(脇から股にかけてのお腹)にできる腫瘍です。

一か所だけの場合もありますが、何か所も多発することもあります。

初期では気にしたりなめるなどの症状は現れませんが、

お腹をなでたりする際に乳腺部にしこりが確認できます。

乳腺腫瘍は良性と悪性の二つに分かれますが、

悪性の割合が30~50%と比較的高いため、見つけたら早めに受診することがお勧めです。

 

【診断】

身体検査や避妊の有無、避妊手術を受けたタイミングにより診断を進めます。

また、診断の補助として針で細胞を取る検査(針生検)を行うこともあります。

最終的な診断は手術で腫瘍を取った後の病理組織検査により行いますが、

多くは触診などで初期の診断が可能です。

 

【治療】

手術が最も効果的な治療法です。

良性の場合は様子を見ることもありますが、悪性の場合は手術が必要です。

手術には「小さく取る方法」と「大きく取る方法」があり、

それぞれには次のような特徴があります。

・小さく取る方法:傷が小さく、回復が早いが、再発の可能性がある。

・大きく取る方法:再発の可能性は低いが、傷が大きく、回復に時間がかかる。

具体的な方法の選択は動物の状態や腫瘍の大きさにより異なります。

 

【当院における取り組み】

乳腺腫瘍に対する最も効果的な治療は手術ですが、

当院では必ずしも手術を推奨しているわけではありません。

手術は効果的な治療法ではありますが、腫瘍が小さい場合や動物が高齢である場合、

または持病がある場合などでは、手術を行わずに様子を見る経過観察が選択されることもあります。

手術を行う際には、当院では一部の施設にしか使用できない高い鎮痛効果のある痛み止めを使用し、

手術中や手術後の痛みを和らげ、入院に伴うストレスを最小限に抑えるよう努めています。

動物の状態や腫瘍の大きさにより、

手術を避けるべき場合や手術によるダメージが大きい場合も考慮されます。

そのため、腫瘍の状態、動物の様子や性格、そしてご家族の方々のご意向を十分に尊重し、

治療の方針を共に相談していきます。

 

【通院・入院の予測】

手術が必要な場合、通常は約3~7日の入院が必要です。

ただし、腫瘍が小さく、傷も小さい場合は日帰り手術も可能です。

手術を行わない場合には、通院で様子を見ることが一般的です。

 

【費用の予測】

診断までの費用は約2000円から2万円程度です。

腫瘍が小さく身体検査のみの場合には診察料のみかかりますが、

腫瘍が大きく細胞診やレントゲン検査なども行う場合には費用が1-2万円程度かかります。

治療費は手術を行うかどうかにより異なりますが、手術を行った場合の費用をご提示します。

手術の費用は多くの場合1525万円程度です。

この費用は腫瘍の大きさ、動物の状態、手術の方法により大きく異なります。

腫瘍が小さく日帰り手術の場合は7~10万円程度ですが、

腫瘍が中程度であり3~7日程度の入院が必要な場合には15~25万円程度かかります。

また、腫瘍が極めて大きく腫瘍以外に持病があるなどの場合には25万円以上かかることもあります。

最大でも40万を超えることは稀です。

なお、この費用は小型犬の場合の予測であり、動物の状態や体重により異なる可能性があります。

費用に関しては、診療された獣医師と詳しくご相談ください。