犬の甲状腺機能低下症
【概要】
甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気であり、中高齢の犬で比較的多く認められます。原因としては、自己免疫の異常によって甲状腺組織が破壊されると考えられています。甲状腺ホルモンは全身の代謝を活性化する作用を持つため、その欠乏によって代謝の低下が生じます。そのため症状としては、全身性の脱毛や尻っぽの脱毛、皮膚の細菌感染、活動性の低下、肥満などが認められることがあります。また症状が重度の場合は眼瞼や口唇の下垂、ふらつきなどの神経症状が見られることもあります。
【診断】
全身の脱毛や活動性の低下などの特徴的な症状が認められる場合に本疾患を疑い、診断のために血液検査でホルモンの数値を測定します。甲状腺ホルモン(T4、fT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定することで総合的に判断します。また甲状腺機能低下症に伴い貧血や肝酵素の上昇、高脂血症などが認められることもあるので、全身の血液検査を実施することもあります。
【治療】
甲状腺ホルモンの内服薬により治療を行います。甲状腺機能低下症に伴う皮膚症状などが改善されるかを定期的にチェックしながら、治療開始1~2カ月後に再度甲状腺ホルモンを測定し、ホルモンの数値によってお薬の量を調整します。活動性の低下や貧血などの症状は、治療開始後1~2週間程度で改善することが多いですが、皮膚の症状や神経症状は改善するのに数カ月かかる場合もあります。
【当院での取り組み】
前述の通り甲状腺機能低下症は中高齢の犬で多くみられる病気であるため、皮膚の脱毛や感染症、活動性の低下などの疑われる症状が複数認められる場合は積極的にホルモン検査を行うことをご提案しています。特に、皮膚の脱毛や感染症がなかなか治らないという場合に本疾患を診断し、甲状腺ホルモンの内服薬を開始すると徐々に毛量や感染症のコントロールが出来ることも多いため、特徴的な症状が認められる場合は常に本疾患の可能性を疑いながら診察を行います。
【通院・入院の予測】
ほとんどの場合は通院で治療可能です。診断した場合は、まずは内服薬を1~2週間継続いただき、薬が飲めているかどうかご自宅でのご様子などを確認します。薬を継続できそうであればそのまま継続いただき、1カ月後に再度ホルモン検査を行い薬の量が適正かを確認します。初めの数カ月は、月に一回くらいの頻度で通院いただき、薬の量の調整を行いますが、ある程度数値が安定してきたら、通院の頻度も3カ月~半年に一回に減らすことが出来ます。非常にまれではありますが、甲状腺機能低下症に伴い意識状態が顕著に低下している場合は入院治療を勧めることもあります。
【費用の予測】
診断までの費用は2~3万円程度で、ホルモン治療を開始すると1ヵ月あたり5000~6000円程度になります。なお、この費用は患者の状態や体重により異なる可能性があります。この病気は基本的には生涯にわたって治療が必要になるため、治療に伴う費用や投薬がわんちゃんや飼い主様にとって負担にならないよう、診察を行った担当獣医師としっかりと相談しながら進めていきます。