胃腸の腫瘍
【概要】
犬や猫の胃や腸にできる腫瘍は、種類によって性質や進行のスピードが異なりますが、多くの場合は悪性(がん)であることが多く、注意が必要です。特に高齢の動物で発生することが多く、症状としては食欲の低下、嘔吐、下痢、体重減少、便に血が混じる、などの一般的な胃腸炎と似ていますが、これらの症状が2週間以上続いたり、治療をしてもなかなか症状がよくならない場合には腫瘍の可能性も考えられるため早めの検査をお勧めします。
【診断】
胃腸の腫瘍の診断には、まずエコー検査(超音波検査)で胃や腸の壁の厚みやしこりの有無を確認します。異常が認められた場合には、血液検査やレントゲン検査で全身の状態を把握し、さらに詳しく調べるために細胞を取るための検査として内視鏡検査や針生検を行います。内視鏡や針生検では腫瘍の一部を採取(生検)して、病理検査を行うことで腫瘍の種類を確定できます。腫瘍の種類が診断された上で、最適な治療方法を検討します。
【治療】
胃腸の腫瘍の治療法は、腫瘍の種類と進行具合によって異なります。代表的な治療法には以下の2つがあります。
・外科手術
腫瘍が一部だけに限局しており、切除が可能な場合、合併症の腸閉塞があり緊急性がある場合は、腫瘍を含む胃や腸の一部を外科手術で取り除きます。早期に発見できれば、手術によって完治が期待できる場合もあります。
・抗がん剤治療
胃腸の腫瘍のうち犬猫ともに「リンパ腫」という腫瘍の場合には抗がん剤が効果的であることが多いため、手術と併用もしくは抗がん剤治療が優先されて行われることがあります。抗がん剤は定期的な通院で投与を行い、効果を確認しながら継続していきます。リンパ腫の中には、治療に良く反応するタイプもあるため、早期に診断し、適切な治療を開始することで、生活の質を保ちながら長期間のコントロールが可能なケースもあります。治療法は腫瘍の種類、動物の年齢や体力などに応じて選択されます。
【当院の取り組み】
当院では、まず動物と飼い主様の生活にできるだけ負担をかけないよう、段階的な検査を行いながら診療を進めていきます。腫瘍の可能性がある場合も、いきなり手術や抗がん剤治療に進むのではなく、必要な検査を行ったうえで、腫瘍の種類と進行度を見極め、治療方針を慎重に検討します。例えば、手術での切除が可能なケースでは、体力や回復力を考慮して手術を提案します。一方で、リンパ腫のように抗がん剤による内科的な管理が適している場合には、治療の内容や頻度を丁寧にご説明し、ご希望に応じて診療計画を立てていきます。年齢や性格、生活環境に合わせた「その子にとって最適な治療」をご提案することを大切にしています。
【通院・入院の予測】
初期の検査では、ほとんどの場合日帰りでの対応が可能です。精密検査として内視鏡や針生検を行う場合にも多くの場合には日帰りでの対応が可能です。外科手術を行う場合は、7-14日程度の入院が必要となることが多いです。手術後は痛みの緩和だけでなく栄養管理が必要となります。術後は1〜2週間ごとの経過観察の通院が必要です。抗がん剤治療を選択する場合は日帰りでの対応が可能です。数週間に1回の通院を継続することが一般的です。副作用や効果のチェックのため、定期的な血液検査も行います。通院の頻度や期間は治療内容や個体差によって異なるため、詳しくは獣医師とご相談ください。
【費用の予測】
・初期検査(エコー、血液検査、レントゲンなど):10,000〜30,000円程度
・精密検査(内視鏡検査や針生検など):70,000〜10,000円程度
・外科手術費用:250,000〜350,000円程度(入院費含む)
・抗がん剤治療:1回あたり15,000〜25,000円程度
※抗がん剤治療は継続的に行う必要があるため、月あたりの費用は複数回分かかることもあります。治療方針が決まった段階で、詳しい見積もりをご案内いたします。