腎臓の腫瘍

【概要】

犬や猫の腎臓にできる腫瘍は、比較的まれではありますが、発見された場合にはその多くが悪性(がん)である可能性が高いとされています。腎臓は左右に1つずつある臓器で、体の老廃物をろ過し尿として排出する重要な役割を担っています。腎臓の腫瘍は初期にはほとんど症状が出ないため、発見が遅れることが多い病気です。進行すると、血尿、元気食欲の低下、おなかの張りなどの症状がみられるようになります。特徴的には排尿時の痛みがなく、血尿のみが出る場合には注意が必要です。しかし、これらの症状が出る頃には病気がかなり進行していることが多いため、早期発見のための健康診断がとても重要です。

 

【診断】

腎臓の腫瘍は、エコー検査(超音波検査)やレントゲン検査で発見されることが一般的です。腫瘍が確認された場合は、血液検査や尿検査により腎臓の機能や全身の状態を確認します。さらに詳しい検査として腫瘍の種類を明確にするために、細胞を採取して病理検査を行うことで診断を行います。

 

【治療】
腎臓の腫瘍に対する治療は、基本的には外科手術による摘出が中心となります。腫瘍が一方の腎臓に限られており、もう片方の腎臓が健康であれば、腫瘍のある腎臓を取り除いても日常生活を送ることが可能です。しかし腫瘍の種類(リンパ腫など)によっては抗がん剤による治療の方が有効であることもあるため事前の診断が重要となります。これらの治療方法の選択は腫瘍の種類、転移の有無、進行の具合、動物の体力や持病の状態によって異なります。治療方針はこれらを踏まえて動物と飼い主様にとって最善の方法を一緒に考えていきます。

 

【当院の取り組み】

当院では、まず動物と飼い主様の負担をできるだけ少なくすることを大切に考えています。腎臓の腫瘍が疑われる場合も、いきなり大がかりな検査を行うのではなく、初期は体に負担の少ないエコーや血液検査などからスタートします。その結果をもとに、必要に応じて細胞を取る病理検査やCT検査や手術を提案し、動物の年齢や性格、病状に応じた診療プランを立てていきます。例えば、高齢で腎機能に問題がある動物の場合には、手術を避け、経過観察をしながら生活の質を保つ方針を取ることもあります。一方で、若く体力のある動物で手術のメリットが大きいと判断された場合には、できるだけ早期の治療を提案します。常に「その子にとって一番良い選択は何か」を一緒に考えていくことを大切にしています。

 

【通院・入院の予測】

初期検査(血液検査、尿検査、エコー検査、レントゲン検査)では、原則として日帰り検査で対応が可能です。特殊な細胞を取る検査の場合には短時間の麻酔をかけることがありますが、これらの治療も日帰り検査で対応できます。ただし手術を行う場合には通常7-10日程度の入院が必要となります。術後は、体調や検査結果に応じて1~2週間おきの通院が必要となるケースが多くなります。具体的なスケジュールは個々の状況により異なりますので、診察時に詳しくご案内いたします。

 

【費用の予測】

・初期検査(診察、エコー、血液検査、レントゲンなど):10,000~30,000円程度

・精密検査(病理検査など):30,000~50,000円程度

・手術費用(入院、麻酔、術後管理を含む):250,000~350,000円程度

治療費は腫瘍の大きさや進行度、術後の管理の内容によって変動しますが、手術前におおよその費用の概算をお伝えいたしますので、安心してご相談ください。